【書評】読んだら涙がにじんで、花火が恋しくなる本。:天狼院書店の秘本は本当に「非凡」だった。

 
この前東京に行った時に、以前から行きたかった天狼院書店に立ち寄ることができました。
 
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想像以上に小さな本屋さんで「え?こんなところが今話題の天狼院なの?」と目を疑いました。でもお客さんはところ狭しといらっしゃっており、店員さんも本当に楽しそうに店内を説明してくれて、なんとなくいい場所だなと感じたことを記憶しています。

 

様々なコンセプトで選書された本があり、ワクワクしながら見ていたのですが、ミーハーのぼくはやはり1番目立つコーナーへと引き寄せられてしまいます笑。中央にあった「秘本」コーナー。
 
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「秘本」とか言われて、「ホントかよ」と思っちゃったのですがポップを読んだり店員さんの話を聞いているうちに、なんだかムズムズしてきて。「本は出会いだ!」とかわけわかんないことを心で叫びながら笑、二代目「秘本」のこれを購入していました。
 
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白菊-shiragiku-: 伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花

白菊-shiragiku-: 伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花

  • 作者:山崎 まゆみ
  • 出版社:小学館
  • 発売日: 2014-07-17

 

「小説なのかな?」と思って読み始めた当初は、読みにくかった印象を持ったのを覚えていますが、次第にその調査量とそこに込められた想いみたいなものを感じられるようになり、気づいたら電車の中で涙ぐんでいたのです。

 

 

「シベリア抑留」という、事実

 
まだ読んでいない人は絶対に読んだ方がいいと思うので、内容はあまり書かないようにしますが、これまでなんにも知らずに平和を満喫していて本当に申し訳ない気持ちになった驚愕の事実について書いておきます。

 

主人公である伝説の花火師の「嘉瀬さん」は戦争を経験しており、終戦後に旧ソ連によって移送隔離され、抑留生活と奴隷的強制労働を経験した日本人の1人なのだそうです。

 

本に描写されている過酷な生活に耐え、日本に帰還したことだけでも驚きなのですが、そもそもそんな事実があったことすら知らなかった自分の無知に驚愕でした。何も知らずに、昔の人たちが築いた平和の上にあぐらをかいている自分が恥ずかしくなりました。

 

嘉瀬さんとの対話の記録は、ほとんどの部分が「昔のことをよくこんなにはっきりと覚えているな」という印象を受けます。だけどシベリア抑留の経験談を聞くシーンでは、記憶があいまい・おぼろげな感じになる

 

人間の脳は前に進むために、自分を守るために、過去の嫌な記憶を無意識に消す力があると聞いたことがある。シベリア抑留を経験した人は、その辛い記憶を脳の奥深くに沈めて日々を生きてきたけれど、シベリアに「埋まっている」仲間のことはどうしても忘れられず、どうしたら自分の苦しみを癒せるのか?について悩んでいる。きっと今も。

 

嘉瀬さんにとっての癒しは、シベリアにおいてきた仲間に自身の想いを込めた渾身の花火を見せることであり、それを通じてもう2度とあんなことが起こらないように、現在を生きる人々の心に訴えかけることだったのではないかとぼくは感じました。

 

 

伝えたいこと

 
ぼくが感じた「この本が伝えたいこと」は、
 
・人生のど真ん中に経験した強烈な経験が、その人を形作るということ
・1人の強い想いが、多くの人を気持ちごと動かすということ
・花火は人の心を鎮め、幸せにするということ

 
でした。

 

きっとこんな浅はかなことだけではないはずです。この本の中には、嘉瀬さんの人生や、嘉瀬さんに関わった人の人生、この本を書いた山崎さんの人生のストーリーが溢れていて、そこから感じるモノは人それぞれまったく違うと思います。

 

 

響いた言葉

 

人間には死相のようなものが必ず死ぬ前に現れてくるということだ。
どうしても生きて帰るんだと固く決意しているような男には、死相は現れなかった。

 

死と隣り合わせの厳しい毎日の中で見る、自然の一瞬の煌めき。
絶望の淵に置かれた者だからこそ、見えた美しさなのだろうか。

 

収益を求めねばならない大井企画の仕事としてではなく、ひとりの男として果たすべき仕事であると。

 

風渡り 埋もれる友と 夏草と
田中は、風のざわめきとともに、仲間の声を聞いた。仲間はこう囁いた。
「お前は生き延びて穏やかな気持ちになれたかもしれないが、俺たちは何故ここで死ななければならなかったのか。命を落とさねばならなかったのか。」その囁きに涙が溢れたという。

 

花火ってのはね、「わあ〜きれいだな」っとさ、無になれるんですいね。花火を見ている間は、みんないろんなことを忘れられるんです。

 

火ってのはね、人間を鼓舞します。火を使えるのは人間だけだからさ。火が上がる花火ってのは、人を元気づけるんじゃねえかなぁ。おら、花火師として、ずっとそう思ってきたがら。

 

文脈を理解していないとこれらの言葉の響きの良さや強さはわからないと思うので、是非本を手にとって読んでいただくことをオススメします。

 

 

まとめ

 
読んでいる途中で「白菊」の写真が白黒で登場します。
写真なので臨場感はないし、音も匂いも、色も熱もありません。
ですがなぜだか、心にじんわりと残り、目頭がほんのり熱くなる写真でした。

 

長岡の花火を無性に観に行きたくなる、地元の花火大会が恋しくなる本。
天狼院の「秘本」は、非凡な才能を世に広め、多くの人の心と目頭をじんわりと温かくしてくれる本だった。

 

白菊-shiragiku-: 伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花

白菊-shiragiku-: 伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花

  • 作者:山崎 まゆみ
  • 出版社:小学館
  • 発売日: 2014-07-17

 
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動画があった。生で見てみたいな。。。
 

 

それではー!

 

ABOUTこの記事をかいた人

東京都北区出身。 これまでの経験と読書遍歴を活かして、現在は動画制作・コミュニティー運営・速読読書会開催・YouTubeチャンネル運営・オンライン講座を通じて、人が自らの才能を発揮し自由に生きるためのサポートをしています。