はいこんにちはシンプリィライフです。
今回は、橘玲(たちばなあきら)さん著『スピリチュアルズ「わたし」の謎』について解説させていただきます。
まずは橘さんの言葉を引用します。
スピリチュアル理論。
(中略)
このシンプルな理論によって、「わたしは何者なのか?」「わたしとあなたはなぜちがっているのか?」という、人類がずっと抱きつづけてきた疑問が科学として解明できるようになった。
『スピリチュアルズ「わたし」の謎』は、これまで橘さんが書かれた本の中では異色のタイトルとなっておりますが、本書の提案は「自分のパーソナリティを知って、それを活かせる場所を探そうよ」ということなんです。
橘さんは「なぜ自分はこんなふうなのか」という誰もが漠然と抱えている疑問に明快にこたえてくれる「新しいパラダイム」の心理学を「スピリチュアル理論」と名付け、まとめました。
スピリチュアルという言葉に抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、本書では
スピリチュアルとは、心理学でいう「無意識」に「魂」を重ね合わせた言葉である
と定義しています。
また、
こころは脳の活動であり、心理学の主張は脳科学によって検証され、最終的には脳の活動として説明されなければならない
とも言っており、これまで積み上げられてきた学問や科学的な見解にもとづいて書かれています。
「スピリチュアル」という言葉が持つ、モヤモヤと霧がかかったような神秘的とも怪しげとも言える不思議な雰囲気を科学的観点からクリアにし、「わたし」という存在の謎を解明する確かな軸を提供してくれる本です。
ここでは「本当の自分が分からない!」と思っている人が、自分を知る・理解するためのきっかけとなる理論についてお伝えしていきます。
文章が苦手な方はこちらの動画をご覧ください!
それではさっそく結論からまいりましょう。
「自分がわからない」という人が自分を知る方法。
結論は、
です。
ここからは3つのポイント
- 無意識のはたらき
- 無意識の中にいるもう一人の自分
- わたしの謎を解明するビッグファイブ理論
に沿って解説していきます。
ポイント1.無意識のはたらき
本書の「高所恐怖SHOW」というVRアトラクション体験談を例に、無意識のはたらきについて見ていきましょう。
高速エレベータが上昇し、ドアが開くとそこは200メートル下に地面が見えるビルの外。細長い1本の板が設置されていて、板の先端に座っている猫を救出して戻ってくる、というゲーム。
現実空間では板が床から5センチだけ浮いていて、左右にほんのわずか揺れるようになっています。
プレイヤーは現実の状態を分かっていてVRゴーグルをつけてミッションに挑んでいます。さらには、近くにスタッフがずっとついていて、板から足を踏み外しそうになると支えてくれると分かっている。にもかかわらず、多くのプレイヤーがへっぴり腰で歩き、あるときは四つん這いになってしまう人もいるとのこと。
いったいなぜこんなことが起こるのでしょうか。
それは、VR空間において地上から200メートルの位置に浮いている板を渡ろうとするそのとき、無意識が「そんなことして落ちたら死んでしまう!」というアラームを爆音で鳴らすからなんです。
でもあなたの意識は「大丈夫だ、床から5センチ浮いているだけ」と分かっている。無意識が鳴らすアラームを無理やり止めて、板のその先に進もうとします。
というこのせめぎあいのなかで、意識が無意識のアラームに圧倒されてしまってネコを救出するどころか一歩も動けずにリタイアする人もいれば、意識と無意識の落差をアトラクションとして楽しめる人もいるわけです。
つまり、人間は意識が決定した通りに行動をしているのではなく、無意識=スピリチュアルの介入によって「意識した通り」の行動をしていない・できないこともある、ということです。
ポイント2.無意識の中にいるもうひとりの自分
さらに興味深いのは、脳科学者マイケル・ガザニガさんの「分離脳」実験の話。
まず前提を確認しましょう。
脳は左脳と右脳に分かれており、左脳領域に意識を司る部分、右脳領域に無意識を司る部分があります。
そして、視覚について。視神経は交差しており、右目でとらえた情報は左脳に、左目でとらえた情報は右脳に送られるということと、言語を認識できる言語中枢は左脳にしかない、ということを覚えておいてください。
マイケル・ガザニガの「分離脳」実験
ガザニガさんは重度のてんかんの治療で、右脳と左脳をつないでいる「脳梁」を切断した分離脳患者に対して、左視野にのみ「笑え」と書いたボードを見せるという実験を行いました。
左視野とつながっているのは右脳=無意識領域で、言語中枢がないため言葉を認識することはできないハズです。
ところが、見えていないにもかかわらず分離脳患者は笑い出した。
なぜ笑ったのかと聞くと「先生の顔が面白かったから」と答えたのだそうです。
この実験でわかったことは2つあります。
左脳=意識の役割は「自己正当化」
ひとつは、右脳=無意識は言語を意識化することはできないけれど、言葉を理解し命令を実行する知能を持っているということ。
そしてもうひとつは、左脳=意識は、なぜだかわからないが自分が笑ったということは面白いことがあったはずだと解釈し「自己正当化」する知能があるということ。
この2つだけでも驚きですが、さらに驚くことに分離脳患者が左脳=意識の配下にある右手でコップを取ろうとすると、右脳=無意識の配下にある左手がそれをはたき落とした、というような事象が起きたことも確認されています。
この現象についてはまだまだわからないことだらけのようですが、左脳=意識はなぜ「わたし」がそんな行動を取ったのかわからないけれど、右脳の「わたし」=無意識が意志をもってそうしているとしかいいようがない出来事が、脳科学の研究で確認されています。
これらの実験は、右脳にも人格のようなものが立ち上がる場合があることを示しています。
ポイント3.わたしの謎を解明するビッグファイブ理論
ここまでで、私たち人間の脳には無意識の領域があり、その無意識の中にもう一人の自分が立ち上がることがある、ということがわかりました。
無意識の予備知識を得てようやく「わたし」の謎を解明する方法について解説することができます。
わたしたち人間は、他者も「わたし」と同じように考えたり感じたりしていると思ってしまいがちです。でも社会の中で生きていると、相手に伝えたいことが伝わらなかったり、衝突したりすることで「わたしと他者は、おなじなのにちがっている」ということに徐々に気づいていきます。
では、わたしと他者との「ちがい」とは一体なんのことなのでしょうか?
橘さんは
「わたし」というのは、突き詰めれば「無意識」の傾向のことなのだ
と言います。
パーソナリティ心理学では、この無意識の傾向には
- 外向的/内向的
- 神経症傾向(楽観的/悲観的)
- 協調性
- 堅実性
- 経験への開放性
という5つの因子があり、パーソナリティはこの5つの組み合わせによってできているとしています。
これこそが心理学のパラダイム転換を起こした「ビッグファイブ理論」であり、「わたし」の謎は、無意識=スピリチュアルの5つの要素の組み合わせによって説明できるのです。
パーソナリティについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
生物の3つの前提
パーソナリティの大元にあるのは、わたしたちそれぞれの「感じ」です。
まず、わたしもあなたもすべての生物はみんな生まれながらに3つの前提を持っています。
前提1
生き物を駆動させるプログラムの基本は「報酬を好み、損失を避ける」
前提2
生存と生殖に有利なものを選択するようにプログラムされている
前提3
すべての資源は有限。最小限のコストで目的を達成しようとする
人は自らが作り出した巨大な社会の中で、前提1と前提2を成立させるべく複雑なコミュニケーションを取れるように進化してきました。
そして前提3、できるだけ脳のエネルギーを使わず最小限のコストで目的を達成する。そのために「感じ」をつかうことにしたんです。
人間の脳は「良い感じ」と「嫌な感じ」を得たときに交感神経を優位にしてアクセルを踏み、何もない平常状態では副交感神経を優位にしてブレーキを踏んでいます。
脳はものすごい複雑なことをしているハズだと想像していましたが、実は感じた情報が脳に届いたら「良い感じか?嫌な感じか?」という「感じ」で行動を決めるというシンプルな仕組みを採用しております。こうやって脳は身体全体のエネルギーを効率的に管理するようになったワケです。
あなたのパーソナリティを形づくっているもの
そしてこの「感じ」の感度や「感じ方」こそが、わたしやあなたのパーソナリティをつくっています。わたしもあなたも、生物の3つの前提にもとづき「感じ」たことからアクセル・ブレーキを踏み、それが無意識の傾向「ビッグファイブ」として行動に現れ、他者からキャラクターとして認知されているわけです。
実はパーソナリティというものは自分の内側にはありません。パーソナリティとは、身近な他者があなたのキャラクターを評価した結果です。
たとえばディズニー映画「アナと雪の女王」を観て、アナに対してわたしが真っ先に感じた印象は、元気がいいなぁ、楽観的な感じ、時間にルーズで遅刻しそう、お茶目な人、、、などです。言葉にはしませんでしたが、そのキャラからビッグファイブの要素を自然と感じ取っていたなぁと思い出しました。
これと同じように、あなたは親兄弟や友人・恋人、会社の上司・同僚、テレビの中の俳優に対しても、無意識の内にビッグファイブの要素を感じ取ってキャラづけをしているんです。
逆に言うと、あなたの周りにいる人たちもあなたに対してビッグファイブの要素を感じ取りキャラづけしているということ。
つまりあなたは、社会という舞台の上で、周りの人が自分につけたキャラクターを無意識に「役」として演じているとも言えます。
ビッグファイブは自分をアピールするための個性であると同時に、観客が役者に押し付ける固定観念や思い込みでもあるんです。
まとめ
さあ、結論が出ました。
「わたし」というのは突き詰めれば「無意識」の傾向のことであり、「わたし」というのは5つの要素の組み合わせでしかありません。
5つの要素とは、
- 外向的/内向的
- 神経症傾向(楽観的/悲観的)
- 協調性
- 堅実性
- 経験への開放性
この組み合わせがパーソナリティであり、パーソナリティは「わたし」と社会との相互作用によってつくられていくものだと言えます。
本書では、この5つにこれまで心理学者がタブーとして取り扱ってこなかった、外見と知能を加え、さらに3.協調性を「同調性」と「共感力」に分けてパーソナリティの8つの要素「ビッグエイト」とし、わたしたちがこの社会の中でどう生きていくのが良さそうかを解説してくれています。
自分探しをしている、本当の自分がわからない、自分の能力・才能を活かして生きていきたい、と思っている人必読の本です。
スピリチュアルのままに生きていた!と気づける本
はい、というわけで今回は橘玲さん著『スピリチュアルズ「わたし」の謎』を参考に、「自分がわからない」という人が自分を知るために知るべき、無意識とビッグファイブ理論について解説してきました。
わたし自身は、社会の中でただ生きているだけで社会という舞台の上に立っている意識も、役を演じている意識もまったくありませんでした。
キャラ・パーソナリティは自分の内側から生まれてくるものだと考えていて、他者や社会によってつくられるモノだなんて思ったこともなかった。
わたしはただただ無意識=スピリチュアルがおもむくままに、いままで生きてきたんだと、本書のおかげでわかりました。
個人的な考察
これは個人的な考察ですが、「自分探しをしている」「本当の自分がわからない」と言う人が、なぜ長い間悩み続けるのか?というと、パーソナリティが自分の内側にあると思い込んでいるからではないでしょうか。
その固定観念から抜け出し、パーソナリティは「わたし」と社会との相互作用によってつくられていることに気づいた瞬間に、自分探しの旅は終わると思います。
わたしたちは社会という舞台の上でそれぞれ「役」を演じていて、そこから逃れることはできません。
そして「わたし」のパーソナリティとは、「わたし」と社会との関係、「わたし」に対する他者の認識によってできていて、本当の自分というものは内側にはないということ。
それを理解したうえで、最も大事なこと。
橘さんは、
自分のパーソナリティにあった人生を設計することだ
と言います。
以下引用です。
現実の自分とまったく異なるパーソナリティで成功を求めていても、あなたのスピリチュアルはまったく別人なのだから、いずれ破綻は免れないだろう。それよりもいまの自分のパーソナリティを理解し受け入れたうえで、現実的なステップの向こうに成功を見据えた方がずっとうまくいくはずだ。土台のないところで目標にたどり着こうとしても、それは空中に楼閣を立てるようなものだ
自分のパーソナリティを理解し受け入れたうえで、自分の無意識=スピリチュアルの傾向がアドバンテージをもつ場所を探すことが「成功した人生」への近道です。
本書は自分のパーソナリティとはどういうものかを理解するのに役立ちます。
ぜひ本を手に取り、一緒に「成功した人生」へと向かっていきましょう!
最後までみていただきありがとうございました。
それではまたー!