話を聴くつもりだったのに、気がついたらいつのまにか自分が話をしていることってありませんか?
例えば会社で。
「言うことを聞かない」
「報告が全く上がってこない」
「思っていることを言ってくれない」
とか、部下のことを、
「あいつはコミュニケーション能力がない」
「ビジネスマン・ウーマンとしてまだ経験が足りない」
とかげで愚痴をこぼしているシニア(上級職)や管理職の方の中に、部下が話している途中で自分の答えを話し出してしまう人が多いような気がします。
でもこれ、ビジネスのシーンに限った話ではなく。
恋人や夫婦、友人や親兄弟が相手でも、人の話を最後まで聴けず、「いつのまにか自分が話をしていた」ということがあるのではないでしょうか。
では、そういう人はなぜ人の話を聴けないのでしょうか?
その答えは、「自他の同一視」です。
組織コンサルティングとファシリテータをされているワークスアンドシンプリシティ代表の西邑さんに聞いたお話が深かったのでご紹介します。
前の会社で話を聞けないシニアや管理職が多いと実感した
以前勤めている会社で、ぼくは上司とのコミュニケーションがうまくいきませんでした。
ぼくだけではなく、彼の部下の90%以上が、彼とのコミュニケーションに課題を感じている状態だったのです。
そんな空気を察知してか、彼は、管理職研修を受けたあと「聴くことが大切だとを知った」とぼくに話してくれ、部下の話を聴くチャレンジをしていました。
でも、とても多忙なプレイングマネージャーであり、時間がないときに部下と話さなければならないときはいつもイライラしている感じ。
彼の中には「こうすればうまくいく」という答えがすでにあり、時間がないときは話を聴くのではなく答えを押し付けてしまうんです。
「言う通りにしろ!」が一番手っ取り早いですからね。
このスタイルは、従来の上司と部下の関係であれば当たり前のことかもしれません。
でも彼は「なんか自分の部署の仕事が上手く回っていない…」と感じたからこそ、「話を聞くことが大切」と言ったのではないかと思います。
ぼく自身、子どもの話をろくに聴けない
ぼく自身も、その上司のことを言えた立場ではありません。
子どもの話を聞くことが大切とわかっていながら、子どもが話している途中で自分の持っている答えを言ってしまったり、手を出して解決してしまったりと、とにかく子どもが発している言葉を受け止めようとしていないことに気づいたのです。
聞くことを忘れ、すぐに口を出したくなってしまう…
会社と家庭、場面は違えど、前職の上司とまったく同じです。
シニアや管理職はなぜ人の話を最後まで聴けないのか?
シニアや管理職で、「まずは話を聴くことが大切だ」と思っているのに、部下の話を最後まで聴けない人が多いのはなぜでしょうか?
コーチングで大切なことのひとつに、「相手の鏡になる」があるそうです。
具体的にどうやってやるのかというと、基本は「相手の表現した言葉を繰り返す」ということです。
「は?そんなことですか?」
と思うかもしれません。
試しに人の話を聴くときにやってみましょう。
・・・・・
やってみるとわかると思いますが、これが意外と難しいのです。
難しいのは「言葉だけを繰り返す」という行為です。
人は主観のかたまりだ
会社のシニアと管理職の例を思い浮かべてみてください。
彼らは、会社という舞台の中で役割を演じていて、与えられたミッションや目標があり、それらを「達成する」という枠の中で「部下の話を聴く」という設定です。
そして、シニアや管理職の心の中には「こうなればいい」「こう動いてくれれば目標達成できるはず」とか「こいつは未熟だ」「仕事ができないやつだ」「報告できない、」のような「主観」が存在しています。
ここで、「主観」を持つこと自体は何も問題ないとぼくは思います。
だって、人は「主観」でしかモノゴトを見れませんもの。
どれだけ客観的に見ているという自信があっても、その自信すら主観です。
主観を意識できずに話を聴くということ
自分は「主観」を持った状態だと意識できないまま相手の話を聴くとどうなるでしょうか?
心の中にある気持ちや悩みや課題を、「自分のもの」と勘違いしてしまい、相手の課題を自分のことに置き換えて、「それはこうしたほうが良い」「だったらこうすればよい」と、ついつい口を出してしまうわけですね。
シニアや管理職は、これまで積み重ねてきた経験が豊富で、スキルも高いために、目の前で起こっている問題の原因や、その解決方法がすぐにわかってしまいます。
話を聴いているうちに、「こうすれば解決できるのに…」という気持ちがフツフツと湧き上がってきてしまい、抑えられなくなってしまうのですね。
部下の話を聞けないシニアと管理職の課題
つまり、人の話を聞いているうちに、冒頭で書いた「自他の同一視」が起こったということです。
それは誰の課題か?
確かにシニアや管理職は部下よりも経験が豊富で、問題解決能力にも長けていますので、発生している問題を紐解き対策を的確に練ることができる。
アドバイスの精度は高いでしょう。
ですがよく考えてください。
「その部下の持っている課題は、誰の課題なのでしょうか?」
もっと言うと、
「その部下が言葉にして伝えてくれたものは、課題のどこの部分なのでしょうか?」
自他の同一視
「だからそれは、こうやれば解決できるだろ」と言われたら、部下は「はあ、まあそうなんすけどね…すみませんでした。」という話になってしまう。
そうすると、それ以上は言いづらいし、言いたくなくなるんじゃないでしょうか。
経験が少ない部下は、いまはまだ課題や悩みの本質を自分でもわかっていない状態かもしれませんよね。
その状態で、精一杯、課題の表層の部分を言葉にしたのです。
でも「自他の同一視」が起こると、部下の課題が自分の課題のように思えてしまい、元々の目的である「ただ聴くこと」を忘れて一緒に考えて「主観」で答えを出そうとしてしまう。
途中で自分と相手が混ざってしまい、相手の課題をわかったような気分になって答えを押し付けるようなことをしてしまうのではないでしょうか。
部下の持つ「本質的な課題」は、シニアや管理職の「感情の乗った言葉」によって封印されてしまうかもしれません。
シニアや管理職が人の話を聴けるようになる方法とは?
「ただ聞く」ということは本当に難しいことだと思います。
では、そんな経験豊富でスキルの高いシニアや管理職が部下の話を聞けるようになるために必要なことはなんなのでしょうか?
それは、「言葉と感情を分ける」練習をするということです。
例えば
部下:大変なんですよー!
シニア・管理職:大変なんだねー。
このとき実は、
部下:大変なんですよー!
シニア・管理職:(それはお前の仕事のやり方が悪いからだろ…)大変なんだねー。
というような感情を持って「大変なんだねー。」と言っているとすると、その感情の乗った言葉は部下に伝わり、本当の課題を封印してしまう可能性があるということです。
だから、本当の課題を封印しないためには「言葉と感情を分ける」必要があり、そのためにまずは言葉を発するときに自分がどんな感情を込めているかを認識する必要があるのです。
まとめ:なぜ人の話を最後まで聴けないのか?
シニアや管理職はなぜ人の話を最後まで聴けないのか?
それは、人が無意識に「自他の同一視」をしてしまうからです。
シニアや管理職に限らず、人は相手の課題を聴いているうちに、いつのまにか自分の課題として捉えてしまい、一緒になって考えはじめてしまいます。
その結果、他者の課題に知らないうちに悪気もなく介入し、自分の主観や解釈によって感情的に言葉を使い、本当の課題を封印してしまう。
「人の話を聴く」はとても大切なことですが、その前にまず、「自分はいま、どんな感情を込めた言葉を使ったのか」を知ることからなのだとわかりました。
コーチングは素晴らしい考え方・良い手法だと思いますが、その「手法」や「型」に依存していては、本質的な課題は見極められないということですね。
コミュニケーションや人間関係の課題を解決するための深い話を聞ける、西邑さんの講座が3/11にあるみたいですね。
【○○は、最強のコミュニケーションツール・・・】
対話は、相手の話したいこと、
話したことを言葉にすると大切。
言葉にすることで、、互いの認識が伝わる。そして、その対話、
ノート使って言葉を可視化、
互いに共有すると、、格段…
上司と部下の関係、さらには親子・家族・恋人・友人との人間関係で悩んでいる方にとって、現状を改善するヒントがありそう。
それではー!
<関連記事>
経営者が「孤独な悩み」から解放されるために必要な「たった1つ」のこと。
<おすすめ本紹介>
【本】シニアの品格:「自分らしく生きていきたい」あなたに読んで欲しい一冊。