今、人々は自分の人生を編集して発表しているのです。
-はじめての編集 まえがきより-
ひょんなことから、編集の「仕事」が舞い込んできて引き受けることになりました。面白そうだし絶対勉強になりそうだったので。でも「編集ってなんなの?」って感じです。楽勝とか書いといて、本当に申し訳ないけどまったくわかっていません笑。
とにかく勉強しなきゃと思い、勧められたこの本を急いで購入。
編集ということの意味を知れたどころか、世界の見え方が変わって、生き方を見直せる超素敵な本でした。
楽勝だと言ったのは、人生が編集の連続なら、メディアだろうが新聞だろうが、いつもしていることの延長にあるっつーことだな!と何もわかんないながらもちょっと気が楽になったからです笑。
過去を知ることはあらゆる文明の基盤
人類の歴史は乱暴に言うと編集の歴史であり、人は編集する動物だと僕は思っています。
人間は古代から様々なものを編み集めて生きてきました。木や石や骨を編み集めて斧や刀にし、それらの道具を持つことによって他の動物よりも優位な狩猟生活ができるようになりました。情報についても同じです。音声言語を編み出し、記述する文字を編み出し、そして社会をまとめるきまりと宗教、そして国家を編み出しました。
常に人類は編集しながら生きている。ゆえに編集の歴史ははてしなく広く深いわけです。
古くは紀元前2600年のメソポタミア文明から、印刷機が生まれるまでの間、人々は一点ものの編集物を言葉とイメージとデザインを駆使して一生懸命編集してきました。そして印刷が生まれ、デザインは飛躍的に発展し、編集の現在に至っている。
メディアが発展していく3つの座標軸
歴史を振り返りながら見つめると、
今メディアは「フローとストック」「権威と参加」「記録と創作」といった3つの座標軸の中で三次元的に進化、発展していると考えます。
と菅付さんは言い、編集のアイデアに困ったらこの視点に立ち返りましょうと加えます。
「フローとストック」
電波やネットのメディアは基本的にフロー型で、右から左へどんどん情報が流れていくもの。
一方、紙のメディアはストック型です。貯めようと思えばいくらでも貯められるもの。
フロー型のメディアは大量伝搬に向いていて、即時性が高い。ストック型のメディアはアーカイヴ性、資料性が高く、希少性があり愛着感があります。
「権威と参加」
昔は本は貴重で権力そのものでしたが、メディアが発展するにつれ、誰でもメディアが買える、持てるようになり、多くの人が参加できるようになりました。
ウェブが発展し、ユーザーがどんどん発言できるようになっても、一方では人々はどこかに確固たる権威的な言葉、教養を求めているのも事実。ですので、メディアが全て参加型になるわけではなく、権威性と参加性の中でメディアがそれぞれの立ち位置を求めて進化していくことになるでしょう。
「記録と創作」
メディアの伝達の手段として、事実そのものを虚偽なく記録して伝えるか、創作的に伝えるか、の2種類があり、創作と記録のクロスオーバーによって人を惹きつけながら伝えていくことが大切。
伝えたいこと
編集とは「企画を立て、人を集め、モノをつくる」ことで、「言葉、イメージ、デザイン」という基本の3大要素を駆使して、より多くの人を惹きつける魅力的な表現を生み出すこと。
新しく魅力的な「きまり」を作れるように、過去のことと外のことをよく勉強することが大切で、人々の力を結集し、より多くの人々の心を動かすことができれば良い編集である!と菅付さんは言っています。
響いた言葉
編集は「誰かに、何かを、魅力的に伝える」という目的を持った行為です
この企画は誰を相手にしていて何を伝えようとしているのか。それが企画の原点であって、迷った時はこの点に立ち返れば、解決の糸口が見えてくるはずです
編んで集めることはそのまま企画になります
言葉の編集ですごく大事なポイントは、読者が本文を最初から最後まで読まないだろうということを前提に作る、ということです
文章は飾れば飾るほど汚れる
ひたすら相手にいかに伝えるかということを念頭に置いて考えることも大事
メッセージが伝わりつつも、遊びや驚き、新鮮さがあるようなイメージを追求していくことが大事
編集で大事なのは伝えることよりも触発すること
どのような形式がコミュニケーションを促すのかを考えることがデザイン
デザインとはきまりをつくること
単純に意味を足すだけではなく、意味あるものがうまく組み合わさると、異なる意味を持つようになる
改めて編集とは?
「人が生きるということ自体が編集行為そのものである」と著者は言います。
何を食べて、何を着て、何の仕事をして、誰と付き合い、どこで生きるか、には無限の選択肢があります。その無限の選択肢の中から、自分で可能な範囲で選んでカスタマイズして人は生きているわけです。言い換えれば、人は常に「人生を編集している」のです。
これまで培ってきた言葉とイメージとデザインを駆使し、企画を立て人を集めモノをつくり、多くの人が「面白そうだ」と寄ってくるような新しい魅力的な表現を生み出していけば、それはどんどんスパイラルに登っていき、より面白い人生、面白い世界につながっていく。
編集とはやりたいことをやれる自由を手に入れるため、人生を面白くするための方法なのです。
まとめ
・この編集によって、相手とのどんなコミュニケーションを生みたいのか。
・意味あるものを組み合わせて、新しい意味を生み出せるか。
・どんな情報を編み集めれば相手は触発されるのか。
ぼくは不器用なので、一度に全てを詰め込むことはできません。
なのでまずは上の3つを意識しながら、編集物のコンテンツを考えてみようと思います。
あとは言葉とイメージとデザイン、、、
全然楽勝じゃねえじゃん!笑
読んでて思ったのは、日本の最高の編集物は、詩とか俳句なのではないかということ。
無駄を極限まで排除し、短い言葉で多くの意味を含む、シンプルで美しいきまりのある編集物。
4字熟語とか、究極ですよね。最近4字熟語に美しさを感じ始めています笑。
また、先日書いた「清貧の思想」の書評とも似てきますが、自分にとっての「必要最小限のモノ」を知り、いらないものを捨て、自由に生きることこそ、人生を上手に編集する方法なのかもしれないなとも思いました。
編集で人生が面白くなる、と思わせてくれる本。
中には、たくさんのデザインが解説付で載っているので、それを眺めるだけでもかなり勉強になります。
「編集」というキーワードに引っかかった人は是非読むべきオススメ本です。
気になる関連本。
エディターズ・ハンドブック 編集者・ライターのための必修基礎知識 (Editor’s Handbook)
- 作者:編集の学校/文章の学校
- 出版社:雷鳥社
- 発売日: 2015-03-20
それではー!
<2016/1/6追記>
著者の菅付さんからツイッターでメッセージをいただきました。嬉しい!
丁寧なブログを感謝。役立ってなによりです。 https://t.co/aITSVRRFJt
— 菅付雅信 (@MASAMEGURO) 2016, 1月 5