2016/5/20(金)に「千曲川ワインバレーフォーラム」のラーニングジャーニーに参加して東御市・小諸市のワイナリー巡りをしました。
ワインに関わる人の課題感や姿勢に触れ、自分の生き方を見つめなおすジャーニーになった。
ここでは、ワイナリー巡りを通じてわかった、日本ワインの課題とその解決策についてまとめていきます。
まずはマンズワインでワインの基礎知識を充填
まずは東御市のとなりの小諸市にあるマンズワイン小諸ワイナリーさんに。
ワインの勉強のためにフランスのボルドー大学に留学したという松本顧問のお話を聞かせていただきました。
湯水のごとくワインの知識が溢れてきます。
ワインぶどうは雨に弱い
ワインぶどうの樹は背が低い。
だいたい30歳くらいが働き盛りで、苗木を植えてから10年くらいは美味しいぶどうができないそうだ。
根気のいる仕事だ。
ぶどうの樹は雨に弱く、雨の多い日本で栽培するのは向いていない。
けど、雨量の少ない小諸・東御・上田地域はワインぶどうの栽培がなんとかできそうだということで始まり、勤勉で頑張り屋の日本人は創意工夫をしてワインぶどうを作ってしまったそうです。
ソラリス古酒甲州が甘くて美味しかった
そして、いよいよワインの試飲会。
自分はワインを好んで飲みません。
でも、この「ソラリス古酒甲州」という白ワインは甘くて最高に美味しくて、ワインの見方が変わりました。
こんな飲みやすいワインもあるのか。
「甲州」というぶどう品種は、シルクロードを経てヨーロッパから中国へ渡り、日本に入ってきたそうです。
古酒というのは10年間タンクに入れてあるものなのですが、普通は腐って褐色してしまうところを、腐らないように10年ねかす技術を確立。
甘口なので玄人好みではないかもしれませんが、日本食に合うワインなのだとか。
素敵なお庭と美しい風景が広がる、気持ちの良い場所でした。
リュードヴァン
次は東御市のリュードヴァンというワイナリーへ。
気持ちの良い風が吹く場所でした。
リュードヴァン代表の小山さんは、サラリーマンを辞めてワイン農家をはじめたのだそうです。
「仕方ないよね…」と諦めるのがどうしてもイヤだった
と。
ワイン文化が日本に浸透し、ワインが産業として成り立っている状態を目指しているそうです。
こんな素敵な場所があることにも、ワインに対する情熱を持っている人が近くにいたことにも驚き。
熱意を持って行動している人はやはりかっこいい。
リュードヴァンの思いと課題感
小山さんは、日本のワイン造りは本質的ではない部分があり、間違った解釈で広まりつつあることを危惧していました。
ワインはその土地の気候や水や作り手の技術に左右されます。
中でも『ビンテージワイン』というものはその年に何があったのかをレコードしているもの。
『ビンテージワイン』と言って売っているのに、「このワインのぶどうはどんな気候の中で育ったのですか?」という質問にちゃんと答えられないのは、何かおかしくないですか?
というような問いを投げかけられました。
自分はワインに詳しくないので「ビンテージです」と言われれば「おお!そうなんですか!」とかいって何の疑問も持たなかったと思います。
この話を聞いて、ぶどうの育ちも知らずにビンテージをうたうことは良くないと思ったし、選ぶ側にも責任はあるなぁとも思った。
目の前のことに真摯に向き合う
自分にウソをつかないでものづくりをする。
妥協しない、手を抜かない、こだわる。
もちろん苦労はあるだろうけど、そうやってできたモノやその過程は、つくる側も見ている側も、気持ちが良い。
「目の前のことに真摯に向き合う」ことの意味を、リュードヴァン小山さんのワイン造りに取り組む姿勢から学びました。
リュードヴァンのワインにはワイルドさと力強さを感じました。
アルカンヴィーニュ
アルカンヴィーニュは、千曲川ワインバレー構想の中心人物である玉村豊男さんのワイナリー。
ここはぶどうをワインにするワイナリーの機能と、「自分のワインを作りたい!」という夢を持った人たちが全国から集まって学ぶ「千曲川ワインアカデミー」という学びの場としての機能をあわせ持つ場所です。
アカデミーは昨年度は第1期生24名が卒業し、約20名の方々がワイン農家としてスタートを切ったそうで、2016年度は27名の生徒が通っています。
アカデミーは、夢を持って新規参入してくる人たちが集い学ぶ場所として。
ワイナリーはここにワインぶどう農家として新規参入してくる人たちの「ゆりかご」となる基盤ワイナリーの役割を担うために、ある。
玉村さんには千曲川を中心としたこの地域で、
もっとたくさん新しいワイナリーができ、ワインの質がさらに向上し、ワインを楽しむ場と人がどんどん増えるように
という思いがあります。千曲川ワインバレー構想はそのための活動の1つ。
ワインづくりの課題感と解決策
ちょっと感動したのは
「ゆりかごとしての基盤ワイナリー」
という考え方です。
自分たちのワインをつくりたい!と思う人には、
- 千曲川ワインバレー周辺に集まってきている新規参入者たちは、自分でワインを作りたいと思ってぶどうを育てる
- 何年か経ってぶどうを収穫できるようになり、でもその時にワイナリーができていなければそのぶどうを誰かに買ってもらって収入を確保しなければならない
- そこに大手メーカーから好条件で買取の声がかかる
- 一旦契約してしまうと、ワインぶどうを取り戻すのは難しい
という課題があるのだそうです。
「良いワインぶどうをつくれるようになったのに、それを自分でワインにすることができない…」
ということが、各地で起こっている。
そんな課題を感じた玉村さんは、東御に移り住んでヴィンヤード(ぶどう農家)をはじめた人たちが、本来の目的や思いと共にワインを育ててゆけるように『アルカンヴィーニュ』という「ゆりかご」を用意したのだと解釈しました。
ヴィラデスト
最後は、玉村豊男さんが経営する「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」にてランチ。
「千曲川ワインバレーがつくる未来」を感じるためのラーニングジャーニー。玉村豊男さんの描いた夢に共感した、東京と長野の経営者たちが、新しい地方創生モデルづくりに立ち上がりました。
ワインのテイスティング三昧の一日でしたが、ゴールは「ワインづ…
野村 恭彦さんの投稿 2016年5月20日
まとめ:日本ワインの課題と解決策
東御市のワイナリー巡りでわかった、日本でワインをつくるときの課題をまとめます。
課題は、
- 気候
- 時間
- 資金
の3つ。
1.気候
日本でワインをつくるとき、まず課題になるのは気候です。
ワインぶどうの樹は雨を嫌います。
雨の多い日本の中でも、ワインぶどうが育てやすい晴天率の高い土地を選ばなければなりません。
2.時間
良い土地が見つかっても、良いワインぶどうを収穫できるようになるまでかなり時間がかかります。
苗木を植えてから10年くらいは美味しいぶどうが獲れません。
根気強く、粘り強く、諦めずに育てていかなければなりません。
3.資金
せっかく美味しいぶどうが収穫できるようになってきたときに、ワインを醸造するためのワイナリーがなければ、ワインをつくることができません。
当然ですが、自分のワイナリーをつくりたいなら資金が必要です。
ワインぶどうを売って収入を確保するうちに、大手ワインメーカーから好条件で声がかかり、ワインぶどうを売りはじめる。
いざ資金がたまって「自分のワイナリーをつくれる!」となっても、大手メーカーといったん契約をしてしまったら、自分でつくっているワインぶどうなのに、それを取り戻すことは難しい。
自分のワインをつくるための行動が、自分のワインをつくれなくさせる、ということが起きてしまいます。
日本でワインをつくるときの課題を解決する方法
1つめと2つめの課題は、気持ちさえあればなんとかなりそうですし、東御市にくれば仲間がたくさんいるので、その気持ちも支え合いながら続けていけそうです。
3つめの課題が一番難関ですが、それを解決するために、玉村さんを中心に東御市のワイナリーはお互い支え合って協力し合っていました。
東御市のワイナリーのつながりや、千曲川ワインバレー構想は、日本でワインをつくるときの課題を解決する方法そのものだと思います。
今回、千曲川ワインバレーフォーラムの発起人である小山さんとFSSさんの野村さんのご縁でラーニングジャーニーに参加できて世界が広がりました。
ありがとうございました。
それでは、また。