前回に続いて上田市の地域イノベーター留学について。
上田市のテーマは、「本の町うえだのコミュニティーをデザインする」です。
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受け入れ先のバリューブックスさんは、「NABO.(ネイボ)」や「ことば屋」というお店を町につくり、地域とつながりながら町の人たちの新しいつながりを生み出す拠点としています。
まちの人に必要とされる本屋になり、本でまちを「豊か」にしていきたい、本でみんなの生活が緩やかにじわじわと「豊か」になっていって欲しい。そんな願いを込めて運営されているそうです。
NABO.やことば屋がやっていること自体が、もうすでに「本でコミュニティーをデザインしている」と言えてしまうような気がしていて、テーマの半分は達成できているのかな?と思ってしまいました。
それではあと半分は?
コミュニティーをデザインした先に何を見ているか?ということなんですが、見ているものもすでに明確で、
本を通じてまちのみんなの生活が、緩やかにじわじわと「豊か」になっていって欲しい。
ということなんだそうです。
これがどうすれば実現できるのか、考えてみたいと思います。
豊かさって何なの?
まず始めに壮大なテーマになりますが笑、ふと「豊かさって何なの?」って考えるんですよ。
お金、モノ、心、自然、環境、人、、、それぞれ思うところがあると思います。「豊かさ」へのイメージは十人十色。
ここで、2012年のリオ会議で伝説となった、世界で最も貧しい大統領と言われた南米ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領のスピーチを確認してみましょう。豊かさについてのヒントが隠れているハズです。
SNSで広がった衝撃のスピーチ。世界で最も貧しい大統領が語った、本当の豊かさとは? | TABI LABO
この記事、要約が素晴らしいですね。
彼がスピーチの中で言っていたことを、記事から引用すると、
1.経済のために使い捨てばかりのモノをつくり、大量生産・大量消費の社会から抜けだそう。
2.貧乏な人とは、モノを持っていない人ではなく、無限の欲がある人たちのことだ。モノを持つことは大切ではない。
3.経済が豊かになり、お金やモノをもつことが幸せではない。幸せとは、家族を持ち、愛にあふれていること。
経済が「豊か」になり、個々人が「お金」や「モノ」をたくさん持つことで、みんなの生活が本当に「豊か」になるのか?という問いかけです。
経済が豊かになって社会が発展していくことで、人々の生活が楽になり、個々が創造的・芸術的な表現に使える時間が増えることはとても良いことだとぼくは思います。
しかし今、大きな社会のシステムの中で経済を豊かにするために人々が行っている「消費」と「生産」の活動は、もう本末転倒もいいところであるとムヒカさんは言いたいのだとぼくは解釈しました。
経済を豊かにするために、もし個々が疲弊し幸せでなくなるのであれば、それは本当の豊かさではないということで、つまり豊かさとは、持っているモノやお金の総量ではなく、生きている人が幸せになることだと言ってるのだと思います。
本が持つ不思議な力
本当にビックリしたんですが、バリューブックスさんの倉庫にはもう信じられない数の本がズラッと並んでいたんですよ。そして、こういった本屋はたくさんあるんです。ブックオフとか、普通の書店とか、、、
photo credit: Stockholm Public Library via photopin (license)
で、その本には、一つひとつ著者がいるわけじゃないですか。本の出版に関わる人やその本を購入して読んだ人を含めたら、どんだけの人のつながりがあるのか計り知れません。
関わる人全員の顔を感じることはなかなかムズカシイのですが、少なくとも著者は感じることができる。
本を書いた著者には、伝えたい想いがあるワケです。本にはシェアやギフトの精神がつまっていて、それはこの地球上に星の数ほど存在しているんです。
そんな星の数ほどある本のスゴいところは、時間と距離を超えてぼくらの目の前に現れるところです。
絶対に出会うことのできないハズの人との出会いを連れてきたりします。
そして時に、読んだ人の心に大きな影響を与えたり、行動する勇気を与えたりします。
いまの時代はインターネットで高速に膨大な情報を距離を超えてぼくたちの目の前に運ばれてきますが、本とは少し感覚が違う気がするんです。
本は、手に取ることで人を感じたり、大げさに言えば温もりを感じたりできる気になるからです。
本には、そういった人との出会いを感じさせる不思議な力があるから、手に取った人の想像を膨らませ、心に影響を与え、感動を与え、行動を変えることさえあるのだと、ぼくは思います。
本でまちを「豊か」にするってどういうことなの?
本の本当に力にまだ気づいていない人はおそらくたくさんいます。
(かくいうぼくも、すべてを知っているわけではありませんが……)
そして、この地球上に星の数ほどある本の中には、日常に疲弊したり、目の前の問題が解決できずに苦しんでいる人の助けになる本が必ずあるハズ。
本を書いた人の想い、本が大好きな人、まちの人たちの興味・関心・困りごと。
このつながりをデザインすることができれば、もしかしたら「本でまちを豊かにする」ことは可能なのかもしれない、と考えていて思いました。
上田に存在するバリューブックスという「地下水脈」
バリューブックスは古本をネットで販売している上田市の企業であり、アマゾンで取り扱っている本の数がなんと日本一。本の在庫数はおそらくハンパなものではありません。上田のまちには、古本という素晴らしい「地下水脈」が蓄えられているのです。
photo credit: Water flooded mine corridor via photopin (license)
「本の町うえだ」をつくるためには、まず本がなければ始まりません。そのためにバリューブックスは必須な存在であり、逆にバリューブックスがあるからこそ実現可能な素晴らしい試みであるのは間違いありません。
当然のことですが、この資源をどう使うかはバリューブックスさんの手に委ねられています。
ビジネス的な要素と社会貢献的な要素をどのようにミックスして相乗効果を出すか、対極する「お金」と「志」をどう両立させていくかはとても難しい部分ですよね。
多くの人が笑顔になれる道が見つかるといいなぁ……
まとめ
まとめると、
1.豊かさとは何か?を個々が考え、気づくこと。
2.「本を書いた人の想い」「本が大好きな人」「まちの人たちの興味・関心・困りごと」3つのつながりをデザインすること。
3.まちの「地下水脈」を見つけて、どうすればそれが活きるかを考えること。
という3つのことを念頭において、周囲の人たちの共感を得られるような行動を起こしていけば、古本でみんなの生活が豊かに、まちが豊かになるかもしれないと仮説を立ててみます。
上田が「本のまち」になっていくことで本を通じてまちのみんなの生活が緩やかにじわじわと「豊か」になっていく姿を想像しながら、今後の行動につなげていきたいと思います。
バリューブックスの活動が社会に根づけば、じわじわと「まち」が「社会」が豊かになっていくのだろうなぁと思っています。
あなたの持っている、いらなくなった古本をバリューブックスへ買取に出せば、社会を少し、豊かにすることにつながるハズ。
一度試してみてはいかがでしょうか?
それではー!
<2015/10/13追記>
バリューブックスの中村社長がこの記事をシェアしてくださいました。
上田の街で、naboがやりたいことを、凄く凄くまとめていただいているブログ記事。
なんだか、改めてこういうことができたらいいなぁと、気付く。Posted by 中村 大樹 on 2015年10月8日
クルミドコーヒーの影山さんとの対話の会にも参加されていて、印象的だったのが社員さんとの意見交換風景です。話しにくい雰囲気はなく、社員は社長の前でそのとき感じたこと、仕事上の悩みを打ち明けていて、社長はそれをしっかり受け止めていました。
<参考記事>【本】「今日という日を生きれてよかった」そう思える毎日を生きたい。
なんかいいなぁ〜と。
本で町を豊かにしていくために、協力していきたい気持ちがより一層深まりました。